「閉店時間」の前に、まずコチラでファーストインプレ載せただけで放置していた、フランク・ティリエ「死者の部屋」(新潮文庫)感想をやっつけるとしましょう。
※以下、ネタバレあり! インプレでも触れたけれど、ヒロイン・リューシーのキャラクター造形にいたく親近感を抱いてしまうのは、切株やらスプラッタやらのジャンル嗜好によって日々後ろ指差されている自分を投影できるからだろうなぁ。 「女だって現場に出たい」という志向だけではなく(勿論それもあるが)、単純に殺人事件好き・・・というか、その凶行に至る殺人鬼の特異な思考に、どうしようもない探究心を止められない彼女は、ある意味立派なサイコです。 で、あると同時に、 「そりゃシングルマザーだけど私もまだまだイケるんよ!」(意訳) と、ちょっとイイカンジの同僚にときめいちゃったり、非番の日にそのイケメン同僚が迎えに来た時ちょうどシャワーを(浴室のドアあけっぱなしで)浴びていて、 「やっべ、でも・・・いっそ見られてそのまま○△□になってもいいかも(はぁと)」(意訳) ・・・と思ってたら、実はいけすかない上司で、しかもバッチリ見られててギャー><とか、ええとコレなんてハーレクインロマンス?という配分が、リューシーを単なるサイコにカテゴライズするでなく、魅力的な女性に描いてるとこが良い。 (でもやっぱりその覗き上司もイケメンも、彼女の趣味にはドン引きなんですけどね!w) そんな実にライトな側面もあるかと思えば、偶然身代金を着服する形になったヴィゴとシルヴァンの末路は実に、重い。 二人の実に人間的な弱さが、ある意味、殺人鬼《けだもの》以上の凶行を引き起こしてしまうのは、「シンプルプラン」ものの定石とはいえ・・・ああ、やっぱりヴィゴには踏みとどまってほしかった>< ケッチャムのように胃袋鷲掴まれるような威力はないものの、そこに至るヴィゴの揺れまくる内面はシンプルながら的確に描写されていて、読みながら「ヴィゴらめぇ><」と思うこと必至です。 そこらへんが秀逸だった分、「羊たちの沈黙」のような終盤には(『ホステル』的なスパイスが効いているとはいえ)意外性が乏しいのだけどね。 個人的にはインシュリン注射で頑張ったあの子には助かってほしかったかな。 監禁に自身の病気によるタイムリミットと、2重の恐怖に立ち向かい頑張る、強い意志のええ子やったのになぁ>< あと、《けだもの》がリューシーに目を付け、「ああ、赤ちゃんが危ない><」と思わせておいて結局なんもないとかね。まぁミスリードなのはわかるけども。 (それに、また幼い命になんかあったら、それはそれでヤなんですが^^;) と、いうわけで、絶賛とはいかないけれど、欠点を補って余りある良さを持ったサイコ・ミステリです。 個人的にはオススメ。続編「幻の記憶」の訳出が待ち遠しいなぁ。
by rushiha666
| 2008-08-14 14:37
| 小説
|
by rushiha666
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