[ヘルバウンド・ハート]感想

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クライヴ・バーカー「ヘルバウンド・ハート」(集英社文庫)

《あらすじ》
苦痛が快楽に変わり、快楽が苦痛に変わる《亀裂》の彼方の世界…。
魔道士に誘われ、快楽の世界の囚われ人になった魔性の恋人、フランクを蘇らせるため、ジュリアは行きずりの男にナイフを突き立てた。
血をすすり、生贄のエキスを吸い取り、フランクは人間の肉体を取り戻してゆく。
「血が欲しい、皮膚をくれ!」
フランクの叫びに、ジュリアは二度、三度、殺戮の刃をふるう。
欲望に憑かれた男女を待っていたのは、身の毛もよだつ堕地獄の罠だった。
淫魔が巣食う恍惚世界への扉を開く《ルマルシャンの箱》とは何か?
この世の快楽を貧り尽くすことは罪なのか?
鬼才クライヴ・バーカーが鮮烈に描く愛と妄執のドラマ。

(カバー裏あらすじより転記)

るしはの絶版本感想シリーズ第364回(嘘)は、ご存知、「ヘルレイザー」の原作・・・というか、監督・脚本のバーカー自らのノヴェライズと言うべきか・・・(どっちが先でしたっけ?)
ともかく、「ヘルバウンド・ハート」(旧題:魔道士)です。
現在、どうもケッチャムの新作を読みきる精神的体力に自信がなく、さりとてグロでゴアなものを欲しているという我侭な状態なのですが、
「あ、じゃあバーカーなんて丁度よくね?確か、軽めだったし、超久しぶりだし」
というわけで再読(実に、十ン年ぶり!)とあいなりました。

さて、メジャーな映画の原作(ノヴェライズ)で、しかも本自体は絶版ですから、ざっくばらんに行きたいと思います。(『ヘルレイザー』鑑賞済み前提で)



映画だとカースティは、確かローリーの娘でしたよね?
小説では血縁関係ではなく(もしかしたら親戚かもしれないが詳細不明)密かにローリーに想いを寄せる奥手の女性(同年代)として描かれています。

ジュリア(ローリーの妻)のも描き方も違って、単に夫への愛が醒めたちょっと美人の妻、という感じ。
娘(義理の、でしたっけ?)に冷たい、最初から悪女属性バリバリではありません。
(映画版はそういう記憶が残っているんだけど・・・ちょっとあやふや)
(まぁ、あやふやな記憶前提で行きますね><)
(前提多いなぁ)

でも、特にジュリアに関しては、は映画版の設定が良かった気がします。
小説版では、ジュリアが凶行に走る理由が不十分な気がするんですよ。
いくら、今の夫に愛想を尽かしているといっても、一度セックスしただけの愛人のために、殺人などというリスクを犯すかなぁ、と。
しかも、フランク(ローリーの兄。過去にジュリアと不倫関係アリ)とのただ一度の邂逅、闇の中に異形の姿で「血・・・」と呟いただけで、ああも彼の意図を汲み取り自宅に男を誘い、しかも自分の手で殺害する・・・
それをしそうなキャラクターにジュリアが描かれていないように思います。
それはフランクも同様で、ジュリアにそこまでさせる魅力と言うのが全然描けていない。
この不倫カップルに説得力がないのが、一番(というか唯一)惜しい点でしょうか。
(ああ、ローリーの頼りなさ、ジュリアから見たウザさなんかは、よく表現されていましたw)

もう一点は、(これは映画でも同じだった気がしますが)セノバイト(魔道士)達の意外なマヌケさと、ものわかりのよさに、ちょっと、「プ」となってしまいました。
だって、フランクの脱走に気付いてないんですよ、コイツら!
フランクは異界から脱出しきるまで、いつ奴らに気付かれるかとビクビクしていたのですが、コイツらカースティに言われるまで微塵も気付いてないという・・・
そして、そのカースティの持ちかけた交渉ににちゃんと乗ってくれるあたりが・・・なんというか・・・映画シリーズの情けない彼らのその後を予見するかのような小物臭さが・・・
問答無用でカースティを鉤責めしちゃってから、ゆうゆうとフランクのところに向かうぐらいの、交渉の余地すらない「言葉の通じなさ」が欲しかったなぁ。
あと、我らがピンヘッド様が「女声」というのが衝撃。
えー、映画とイメージ違いすぎ><
でも、小説でのピンヘッドはあくまでセノバイトの一人にすぎず、別に作品を象徴するほどのキャラじゃあないので、よいか・・・
(針の先には宝石付いてるしね。もしかして性別♀かも?)

後はまぁ細かい点(気付いたかぎりの映画との差異)などを・・・

●「快楽」にいろんな種類がある。(なんでもかんでも鎖フックじゃない)
●映画とフランクの死体が血を吸って復活した感じだけど、小説では血から得た力を糧に、異界から空間をこじ開けて(部屋の壁がルマルシャンの箱のように裂け、動き、フランクが姿を見せる場面は映像で見たかったなぁ)復活。
ズル剥けなのが血を吸って回復するのは一緒。
●「技師」が凄くイイ味出している。映画だと変な浮浪者だった気がするけど、小説ではカースティに箱を託して悠然と去っていく・・・かっこいい。

それにしても、最近の拷問映画ブームなどを経験するに、「快楽」(鉤責め)がラストの一瞬で終わっちゃうのは、なんかもったいない感じが。
拷問映画のように、「快楽」自体をメインに据えれば、また違った趣の「ヘルレイザー」が見れそう・・・などと思ってしまいました。
(拷問映画の観すぎかもしれませんが)
そんなわけで、リメイク(結局誰が撮るのやら)には期待したいと思います。
やはりセノバイトの造形、設定、ルマルシャンの箱というガジェットは魅力ですもんね。

ん、なんか小説感想としては横に逸れてしまいましたね。軌道修正~

総評としては「イマイチ」でしょうか。
しかし、映像化前提だった本作で、バーカーを評するのは早すぎる気がしますので、引き続き彼の原点、「血の本」シリーズに突入したいと思います。
とはいえ、「血の本」は「ジャクリーン・エス」と「ゴーストモーテル」を持ってないんですよねぇ・・・古本屋めぐりか密林の中古かなぁ・・・
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by rushiha666 | 2008-08-29 01:00 | 小説
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