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ミスト

ミスト_c0154066_2281719.jpg映画秘宝6月号のフランク・ダラボン(脚本・監督)のインタビューを読んで、元から鑑賞予定だったのがさらに俄然意欲が高まり、折からの体調不良で「布団で寝ていたーい」と訴える老体に鞭打ち行って来ました、スティーブン・キング原作映画『ミスト(原題:THE MIST)』

嵐の翌日、突然立ち込めた濃霧(とその中を徘徊する人食いの生物群)にスーパーマーケットに閉じ込められ人々の様々な姿を描くパニックホラー小説であるキングの中篇「霧」を読んだことのある人は比較的多いと思う。(二つの短編集に収録されて邦訳されてるし、キングがかなりブイブイ言わしてた頃に出た、と記憶しているから)
私も刊行当時読んでいて、最近偶然買った扶桑社文庫「骸骨乗組員」収録版(早川文庫収録版とは若干違うそうな)を途中まで再読したところでした。

まず原作既読者様へ。
自信を持ってオススメします。
とにかく驚くほど原作に忠実。
それは原作が中篇であるため、大幅に鋏を入れずに済んだという部分が大きいけれど、脚色の出来もまたすこぶる素晴らしい。
中篇とはいっても普通の長編なみの長さを誇るので削ってある部分も結構あり、また改変された部分、追加された部分もあるのだけど、そのさじ加減が絶妙。
おそらくキング原作映画の成功作として記憶される作品になるでしょう。
ならば、キング好きには「観ない」という選択肢はないですね。

そして原作未読者様へ。
ホラーテイストの作品自体に抵抗がないのであれば(って、ホラー嫌いがこのブログ見てる筈もないのだが)限定空間でのサバイバル群像劇の一つの完成形を観ることが出来るでしょう。
前述の、既読者に脚色の妙を見せた脚本は、予備知識のない者にとっては単純に「素晴らしい脚本」です。
キャラクターの見せ方がとにかく上手く、誰が誰だかわからなくなることもなければ、不自然に一部の人間がクローズアップされるご都合主義もなく(幸いなことに自己主張するスター俳優は不在である。ハレルヤ!)、そのくせテンポは良く中だるみもない。
演出もさすがダラボン。伊達にオスカー候補だったわけじゃないね!

そして噂のラスト。
これは既読者にも、未読者にも等しく、宣伝どおり『衝撃』をもたらすでしょう。
勿論その『衝撃』は最近の某「俺が伝説」劇場公開版のラストで見せた類の『衝撃』とは別の意味ですのでご安心を!(笑)
ただ、一言だけご注意を。か・な・り、クるぜ?
宣伝の「グリーンマイル、ショーシャンクのダラボン作品」だけを鵜呑みにしてたら、ヤられちゃいますよ?(まぁあの予告編観て鵜呑みにする人は皆無と思いますがね)

ようするに、このジャンルが好きなら、
ミスト_c0154066_230429.jpg
「必見ってコトだよ!」
では、後は追記で細かなコトを。
予備知識ナシで観たい方は勿論回避が望ましいですが、一応重大なネタバレは回避してある(はず)です。まぁ、自己責任で、ドゾ。



・霧の中の生物たち
当然ほとんどがオールCGなのですが、そこらへんはアガサさんも苦言を呈していた某「俺が伝説」のダークシーカーズに比べればなかなかナチュラルに見せようと頑張っていて、ほとんど成功していると言っていいでしょう。
そう、ほとんど、と言いました。このカラー版では。
前日の映画秘宝のインタビューで明かされているのですが、この作品は本来モノクロを想定して撮影されたんだそうです。
霧の白を際立たせる手段として非常に面白い手法ですし、実際観てみて、そういう演出意図によるライティングや演出なのがよくわかりました。
そして、モノクロであったなら、CGがどうしても感じさせるであろう「作り物くささ」がほとんど払拭されるんじゃないか、とも。
北米版DVDには、モノクロ版が収録されるそうです。日本語版も、是非お願いします。
ええ、そしたら勿論、購入決定ですとも。

・トーマス・ジェーン
以前も書いたかもしれないけど、彼はしこぶる大好きな役者です。
2枚目なんだけど、例えば某「俺が伝説」のウィル・スミスのような大スターのオーラとは無縁な彼は、まさにこういう作品にはうってつけです。
「ウィル・スミスだから大丈夫!」という、作品内の説得力とは無縁の(余計な)安心感と彼は無縁だからです。
「彼なら死んじゃうかもしれない」という緊張感は大事ですよね。
まぁ、その点を度外視して、彼が好きなだけなんですけどねw

・ローリー・ホールデン
私の中で「霧+ローリー・ホールデン=傑作」という方程式が出来つつありますw
まぁ、彼女が婦人警官役を演じた「サイレントヒル」は正確には『灰の町』なのですが、ご存知のように原作ゲーム「サイレントヒル」でその舞台は『霧の町』で、しかも当初はキングの「霧」をゲーム化しようとして権利問題で果たせなかった経緯を考えると、なんだかある種の宿縁を感じます。
そういえば、劇中で出てきた鳥の化物、ゲーム「サイレントヒル」の同種の化物にそっくりでしたね。
ちなみに彼女も 的な外見的強さと同時に弱さを表現することの出来る人で、ここらへんのキャスティングも上手いなぁと思います。

・ウィリアム・サドラー
ご存知「ダイ・ハード2」の裸拳法軍人スチュアート大佐!
いかにもレッドネックな人物を好演してくれる彼が中盤に見せる変化はある意味作品の負の部分を象徴しています。(これまた説得力があるんだ)
なんともゲンナリさせてくれる展開(※映画は全然ゲンナリではないよ念のため!)なのに、ニヤニヤしてしまった人、手を上げて!(笑)

・マーシャ・ゲイ・ハーディン
ある意味主人公。
極限状態で狂信的扇動者となる彼女を、これでもかというほど好演。否、快演。(怪、でもいいw)
これがまた「完璧なる狂信者」ではなく、信徒による凶行に青ざめたりする人間らしさがまたイイ。
そして、彼女のお陰で物語後半に素晴らしいカタルシスがある。あのシーンでガッツポーズした人、手を上げてー!はーいw
(実際ガッツポーズしている観客が結構いましたw)

・他にも結構見たことある人が
後、弁護士の人や、「霧の中に何かいるぞ!」と血まみれで駆け込んでくるオッサンなんか、どっかで見た事あるきがします。
生憎パンフレットが売り切れてて(ショック!><)手っ取り早く確認が出来ないのですが、絶対見た事あるんだよなぁ・・・
ちなみにパンフは2、3日で再入荷するらしいので、来週あたり買いに行こうと思ってます。(一応その時にランボーも観る予定)

・衝撃のラスト15分
手記形式である原作のエンディングそのままだと、映画としてはかなり物足りないのはわかっていたものの、「俺が伝説」劇場公開版のアレなんかを見せられた後だとやはり不安になり、いくら前評判が良かろうと「過信は禁物」という気持ちで観たのですが・・・
こうくるとは思いませんでした。ヤられた。(イイ意味で)
これはホント、大ヒットを宿命付けられた大スター主演作じゃ絶対無理でしたね。
嗚呼、主演がトーマス・ジェーンでホントに良かった!
そして、もうひとつ痛烈に思ったのは
モノクロで観たかった!!
と、いうこと。
物語のほんの終盤、周囲を囲む霧が、そして霧に包まれた主人公達の姿が、もしモノクロで描かれていたら、おそらく、その圧迫感、孤独感、絶望感はさらにいや増したんじゃないか・・・そう思うからです。
私の好きな戦争映画「地下水道」、あれに似た、胃が押しつぶされるような感覚を、また体験できたんじゃないか・・・と、思うからです。
嗚呼、頼むから、日本語版にもモノクロ版収録でお願いしますよ!

・・・そういえば、後味もまた「地下水道」に似ていたなぁ。
ズシーンときて、そして残るあまりに皮肉な寂寥感・・・
ダラボン凄い。そりゃ原作者が「こうすりゃよかった」って言うわけだよ。
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「だから必見なのよ!!」
by rushiha666 | 2008-05-19 02:38 | 映画感想‐ホラー‐
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